i*deal Competition 最終審査会レポート

通信・ITSジャーナリストの神尾寿氏基調講演「次世代モバイルビジネス 新時代のキーワード」

通信・ITSジャーナリスト 神尾寿氏

5組のプレゼンテーションが終わると、審査員団はいったん退場し、審議に入った。その間行なわれたのが、通信・ITSジャーナリストの神尾寿氏による基調講演「次世代モバイルビジネス 新時代のキーワード」だ。

神尾氏は、現在は新しい10年のスタートラインにいる。と説き、「750」という数字を提示し、これが何を意味する数字か? と謎かけをした。答えは「通信速度」。1999年2月にiモードが9.5Kbpsで開始され、現在はHTDPAになって7.2Mbps。10年で約750倍もの進化を遂げている。

そして、プロセッサも進化した。Qualcommの次期Snapdragonは、クロック周波数が1.5GHzまで向上。組み込みチップも「WMD(Wearable Mobile Device)」ということで、ワンチップで多機能化、そして低価格化してきた。少し前の通信モジュールは1万円程度だが、現在は3000円まで下落している。

MPUの性能進化。高速化と高集積化、そして低廉化が進んでいる。

こうして、インフラは高速・大容量化し、半導体のワンチップ化、高性能化、低価格化も激しい。「iモードが出てからの数年間の進化のスピードも速かったが、2009年以降のスピードの速さは、3日お休みをするとついていけなくなる“ラットイヤー”だ」と神尾氏は語る。

7+1(n)に備えよ!

次に神尾氏がスクリーンに映したのは、「7+1(n)」という意味深な数字。これは、従来の3スクリーンにプラスして、iPadのようなデジタルコンテンツやインターネットのプレイヤー、ゲーム専用機、カーナビやPND、デジタルフォトフレームとテレビとchumbyが合体したような、個人部屋に置かれるネット端末を足して「7」。さらに各所に点在するデジタルサイネージを1(n)として捉えたもの。

2009年後半から、専門家が集まると「スクリーンはいったいいくつまで増えるのか?」という議論になっているという。7つ全部を使うかどうかはまだ分からないが、少なくとも5や6までは増えていくだろうというのが神尾氏の予想だ。

ただ、いくつ増えるかが重要なのではなく、スクリーンが増えるという確定した事実への認識と、それらを連携しないといけないという点だ。「クラウド上なのかリアル連携なのかは方法論の違いだが、今まではスクリーンごとに事業部があって個別にビジネスをしていた。しかしこれからは、スクリーン横断でどういうコンテンツを提供するのか? マルチスクリーンで戦略を考えよう」というのが神尾氏の提案である。

神尾氏はまた、コンテンツプロバイダに対しても、従来は携帯電話だけを見ていればよかったが、これからはそれではだめで、携帯電話のスクリーンを他のスクリーンにどうやったら提供できるか、サービスの連携やDRMの連携をどうするのか。こうした連携をネット上でやっていく発想が必要なのだという。

神尾氏が提示した7+1(n)。

決済スキームもまた、考えなければいけない点だ。神尾氏は「ここがモバイルビジネス成功のカギ」だと言い切る。iモードはキャリアが提供していた決済スキームがあったわけだが、その適用範囲がマルチスクリーンに広がっていくにあたり、いかに決済のプラットフォームを作れるか? という課題が出てくる。

ここでクレジットカードに解を求めるのは、誤りだと神尾氏は言う。クレジットカードの利用率は日本では10%未満と考えたほうがいいし、リアルではさらに低くなってくる。つまり、それ以外の課金をどうやって提供していくのかを考えるのが重要だと神尾氏は説く。

モバイルビジネスは、携帯電話ビジネスを包含する形で裾野が広がっていく。いかに成長セグメントを見つけて投資するのか、時間軸とターゲット選定が重要になってくる。「新しいプラットフォームには、柔軟な姿勢で参入していただきたい」と神尾氏は言う。2010年から2012年は、日本・海外を含めて、次の10年の勝ち/負け組みが決まる。

最後に神尾氏は、モバイル市場が広がってきており、テクノロジーが多数出てきている現状を改めて述べ、「今までの、10年の知見を高める形で、携帯電話という1つの枠組みにとらわれない新しいビジネスを発想していただきたい」と来場した人々にメッセージし、段を降りた。