特集 ―電子出版の未来を開く「MAGASTORE」~電子出版でのプラットフォーム化を進めるヤッパ―

iPhoneやソフトバンク携帯上で雑誌コンテンツを購入・閲覧できるアプリ「MAGASTORE(マガストア)」。すでに「AERA」「ar」「GQ JAPAN」など、さまざまなジャンルの雑誌の記事を購入できる。

MAGASTOREを提供するのはヤッパと電通。両社の共同によって開発された。特にヤッパは多様なデバイス上で動作する電子出版プラットフォームを提供するなど、今注目されている企業の1つである。話題となったiPhone用の産経新聞アプリも同社の開発である。

このMAGASTOREおよび電子出版プラットフォームを、どういう過程でヤッパが開発することになったのかをヤッパ代表取締役社長の伊藤正裕氏に、そして電通はどうして雑誌コンテンツの電子化に力を入れているかを電通 雑誌局ビジネス開発部の文分邦彦氏にそれぞれ聞いた。

派生的に生まれた技術で何が可能かを考えて「電子新聞」へ

「自社の持っている技術を最大限に活かすマーケットを探り、マーケットを作っていく」
「先見性があってビジネスモデルを描ける人と、それを作るための技術のあるエンジニアとでチームを組むことが理想的」

ヤッパはもともと、ケータイ用のライブラリや3Dインターフェイスなどを提供してこられたようですが、なぜ電子出版ビジネスを始められたのでしょう?

伊藤

ヤッパのコア技術は元々3Dグラフィック事業です。その技術を2004年に大幅に改善したときに生まれたグラフィックエンジンが、フレームバッファ周り、つまり2次元画像処理を高速にするものだったのです。

3D描画を高速化するのに必要な技術として開発したものをほかのことに使えないか? と考えたのがきっかけです。そこで実現したのが「電子新聞」だったのです。新聞の原稿が完成して刷り上がるまでの2時間程度という限られたスケジュールで、最終データから電子新聞の発行までを可能にするのがヤッパの技術です。

それが2005年にリリースされた、PC用の「産経NetView」ですね?(注釈:月額420円で毎朝5時に産経新聞朝刊の画面がネット配信されて読むことができる)。

伊藤

2008年になって会社の方向性をモバイルに向けようということで、技術をモバイルデバイス上に移植したのです。これまでモバイルに関してはUIのデザイン、UIを実現するためのグラフィックテクノロジーを作っていましたので、それらの技術と組み合わせて使い勝手のよい電子出版を実現できました。これが2008年末に提供したiPhone用の「産経新聞」アプリです。

今日の産経新聞の紙面を、見慣れた新聞のレイアウトのまま、丸ごと無料で読むことができるiPhone用の「産経新聞」アプリ

そのときにiPhoneを選んだのはなぜでしょう?

伊藤

iPhoneがケータイ市場に与えたインパクトはとても大きかったし、タッチパネルの登場もとても大きかったですよね。ある分野に新規参入する場合、参入したときのインパクトが大きく、1つの成功例として掲げられるようなことを手がけるのが重要です。そういう意味でもiPhoneというプラットフォームには惹かれました。もちろん開発プラットフォームとしても、開発が容易でコストも抑えられる、非常に優れた魅力的なものだと思っています。

ビジネス的な面でもiPhoneは魅力的だと思いましたか?

伊藤

ビジネスの展開を考える上では、自社の持っている技術を最大限に活かすマーケットを探り、マーケットを作っていくということに努力してきました。スマートフォンというジャンルで何ができるのかということを考えたとき、従来のグラフィックライブラリの販売だけではなく、iPhone用のアプリ開発という流れになりました。

伊藤さんはエンジニア出身ではないとのことですが、実際にビジネスに参入するデバイスや市場を選ぶときの勘所のようなものはあるのでしょうか?

伊藤

エンジニア出身ではありませんが、元々こういったデバイスに興味を持っていましたし、勉強をしていました。それでも自身でプログラムを組むわけではありませんから、実際にはチームを組むことが大切です。先見性があってビジネスモデルを描ける人と、それを作るための技術のあるエンジニアがいることが理想的です。こういった両建ての構造でないと、アプリ開発もうまくいかない時代になっています。